「想いを伝えるアイテム」ものづくりの魅力
「手作りの入学グッズで息子と繋がっていられるような感覚になれた」
VALLEY SEWING JAM(ヴァレイソーイングジャム)川口校・根橋先生に、ものづくりの魅力をインタビューしました。
6歳から通える子ども洋裁教室、VALLEY SEWING JAM。 今日もさまざまなレッスンが行われ、子どもたちがミシンへ向かっています。
今回は、そんなVALLEY SEWING JAM 川口校で指導をされている根橋先生にインタビューをしました。
高校生のときに初めてミシンでのソーイングを経験し、パタンナーとなって一般企業に就職された根橋先生。毎日の仕事で忙しいなか、お子さまを思って入学グッズを造られた根橋先生の思うものづくりの魅力とは、どのようなものなのでしょうか。
手作りには買ったものに代えられない何かがある
――根橋先生はソーイングにいつ頃からご興味を持たれていたのでしょうか。
根橋先生: 母が身近なものを手づくりしてくれていたこともあり、ミシンを踏む母の姿は幼いときからよく目にしていました。
クラブ活動が始まった小学生の頃、「自分でもやってみたい」と思い、手芸クラブに入ってハンドメイドの楽しみを知ったことも大きいです。手芸クラブではぬいぐるみやバッグなど手づくりし、友達や親戚の子にプレゼントをしていましたが、贈る相手のことを思いながら作るのが好きでしたね。
――初めてのミシンを使ってのソーイングではどのようなものを作ったのでしょうか。
根橋先生: 高校生のときに初めてミシンを使って、フレアスカート作りに挑戦しました。
持っていたお気に入りのスカートをもとに型紙を作って製作しましたが、工程を考えながら製作するのが難しくて…。自分が思い描いた作品に仕上がりませんでしたが、作っている間はとても楽しかったですし、「服作りをしっかりと勉強したい」と考えるきっかけにもなりました。
――ミシンでのソーイングがその後の進路を考えるきっかけになったのですね。
根橋先生:はい。本格的に服作りを学ぼうと、服飾を学べる学校へと進学しました。専門的な知識を学ぶと更にパターンの楽しさと魅力に惹かれ、卒業後は一般企業にパタンナーとして就職しています。
――就職後も趣味としてソーイングは続けられていたのでしょうか。
根橋先生:服作りの楽しみを知って始めた仕事ではありましたが、パタンナーとしてフルタイムで働いていた際は、あまり時間をとれませんでした。今思えば、日常で息子とゆっくりとした時間をとることも難しかったです。
息子に服を作りたいと思っても時間が無くてモヤモヤはありましたが、息子が小学校へ入学する際、「入学グッズは手作りしたい」と思いを込めて作った入学グッズを持たせていました。どんなに忙しくても、息子が私の作ったバッグを持っているのを見ると、どこか息子と繋がっていられるような感覚になれました。息子も、私の作ったバッグや移動ポケットを毎日大切に使ってくれていたのも嬉しかったです。
――ソーイングにご興味を持たれたのも、手芸クラブでプレゼントを作っていたときだとお話しされていましたが、「思いを込めて誰かに作る」という点が共通していますね。
根橋先生:買ったものももちろん素晴らしいですが、手作りのものには買ったものには代えられない何かがあります。ご家庭でのソーイングは料理にも似ていて、「レストランのカレーも美味しいけど、お母さんの作ったカレーも好き」といった、お金を出せばプロの美味しいものも食べられるけど、おうちでお母さんの作ったハンドメイドのものも温かみが感じられることに近いように思います。
思いを伝えるアイテムを手軽に作ることができるのがソーイングの魅力
――ソーイングの魅力はどんなところにあると思いますか。
根橋先生:ハンカチやバッグなど、特別なものではなく日常で使う身近なものを、手軽にいつでもつくれるところでしょうか。材料や型紙があれば、「もっとポケットがあったら使いやすいのに」「もっとデザインが素敵なら楽しく使えるのに」といったアレンジもできるのも魅力です。
そして思いを伝えるアイテムをお家で手軽に作ることができることも、ソーイングの魅力だと思います。
――逆にソーイングの難しさはどこにあるのでしょうか。
根橋先生:ソーイングは、素材や縫い方、線の引き方で同じ型紙を使っても仕上がりが変わってきます。だからこそ、ソーイングに正解はないのかもしれません。「この前と同じように作ったのに、今回はどうして仕上がりが違うんだろう」と何度も試行錯誤すれば、自然と経験を積んでいけるため、ソーイングの難しさは楽しさでもあります。
――ソーイングは経験を積むことが上達や楽しさにつながってくるのですね。
根橋先生:ソーイングも運動と同じで、たくさん練習をして、失敗の数や経験の数を積めば積むほど上達します。まずは自分の好きな素材や作り方を探しながら楽しんでいけば、自然とできなかったこともできるようになっているかもしれません。
また、さまざまなものがあふれている現代では、ひとつの物事に集中することはあまりないのではないでしょうか。ソーイングは、制作に取り組んでいるうちに1時間があっという間に経っていることもあります。自分の物を作るときは「自分とじっくり向き合う時間」、贈り物を作るときは贈る「相手を想う時間」として、まずは作る時間を楽しむこと。そして「作りたい!」という気持ちを持続することができれば、自然と上達できると思います。
ソーイングはお子さまが自信を持つきっかけになる
――ソーイングによって、お子さまはどんなことが学べると思いますか。
根橋先生:ソーイングではミシンを使って縫った後、最後にひっくり返して完成することが多くあります。どの順番でどこを縫っていくのかを考えるのは難しいですが、「なぜこの工程が必要なのか」「どの順番で工程を進めるのか」を考えたり、立体的にモノをとらえる想像力が鍛えられます。
――たしかに、スカートやズボンのポケットを作る場合も、どんな形の布をどうやって縫うのか最初はイメージできないかもしれません。
根橋先生:ポケットひとつとっても、「端を縫って開けておいて、どこを留めて縫ってひっくり返して…」という一連の工程を経てポケットができるようになります。
ソーイングはミシンに集中する集中力、忍耐力も身に付きます。勉強でレッスンと同じ1時間半集中するのは難しくても、自分の好きなものを作っている1時間半は集中できたことはお子さまにとって良い成功体験になるでしょう。
――ソーイングはお子さまにとって自信を持つことにもつながっていくのですね。
根橋先生:やはり自分でミシンで作ったものを、大人に「頑張ったね」「こんなものまで作れるなんてすごいね」と評価してもらえるのは、お子さまの自信につながっていきます。大々的なものでなくても、家族に褒めてもらえることが家庭の中で増えていったらいいなと思います。
――ソーイングの指導ではどのようなことを心掛けていらっしゃるのでしょうか。
根橋先生:大変なことも「視点を変えれば楽しめる」「面倒な工程もどう楽しむか!」をポイントにしてレッスンしています。もし工程を間違えてしまったとしても、「直すことも覚えられるね」と視点を変えることで、新しい技術が覚えられると切り替えできるように伝えています。
ソーイングは地道な工程もありますが、自分で作っていくことが重要だと思っています。お金を出して買うのではなく、サイズアウトした服をリメイクしてもう一度お気に入りの物として身近に使うように、「あるものから自分の手で作り上げる」という意識を持てる子ども達を増やしていきたい!ミシン好きの子どもを増やしたい!という思いでレッスンを行なっています。
――モノがあふれている世の中で、お子さまとミシンを使ってモノづくりをする価値をどんな風に感じているのでしょうか。
根橋先生:ものを作ってみると、ものづくりの大変さを感じることができます。自ら体験しその大変さを学び、ものの価値は値段や見た目でないことを感じ、自分基準のものの価値を見つけてものを大切にする心を育んでほしいと思っています。
――ミシン好きのお子さまは、ものを繰り返し使うエコの視点も自然に芽生えるかもしれませんね。
根橋先生:私はパタンナーとして、たくさんの人たちが1着の服に関わる様子を見てきました。時間も手間もかけて作った服が廃棄されていくのは悲しく感じていましたが、自分の欲しいものは自分でミシンを使って作ることをひとつの方法として考えるお子さまが増えれば嬉しいです。
取材を終えて
根橋先生にはご自身の経験も踏まえながら、ソーイングには手作りだからこその温かみや思いを込めて作ることができる素晴らしさをお話しいただきました。相手のことを思って作ったものは、年月が経っても贈られた相手にとって特別になるのかもしれません。
みなさんもぜひ、贈りたい相手の喜ぶ顔を思い浮かべてソーイングに挑戦してみてはいかがでしょうか。
VALLEY SEWING JAM (ヴァレイソーイングジャム)
VALLEY SEWING JAM(ヴァレイソーイングジャム)は、
「日本の縫製業を次世代につなぐ」というビジョンを掲げる奈良県の縫製工場ヴァレイにて子どもたちへ"作る楽しみ”を伝える教室として、6歳から通える子ども洋裁教室をスタート。
「自分が何かを作る側になる」ことで自分の価値観を養い、ものを大切にする心や感謝する心を育む。
VALLEY SEWING JAMではソーイングの基礎から応用まで幅広く楽しく技術の習得ができるよう独自のカリキュラムを活用し、SDGsや思考力を育む環境を提供しています。
現在は全国に11校200名の生徒が在籍中。(2023/2時点)